一般的に乳がんの治療法はどのように決定し、 また治療はどのように進められるのか、解説します。

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◇ 乳がんの治療の組み立て

  乳がんの治療は病期に応じて、外科手術、放射線治療、薬物療法を組み合わせて治療を行います。
  これを「集学的治療」と呼びます。

  がんの治療は治療技術の進歩とともに変わりますが、その時点で得られている科学的な根拠に基づいた最善の治療を
  「標準治療」と呼びます。
  ただし、標準治療は「完全な治療」ではありません。
  新しい治療の有用性を科学的に検証する「臨床試験」によって、がんの治療成績を上げる努力が世界の各地で常に行われて
  おり、臨床試験によって現在の標準とされる治療、よりよい治療であることが証明されれば新たな標準治療が生まれます。
  つまり現在の標準治療は臨床試験の積み重ねの中から生まれてきた治療法です。
  逆に現在行われている臨床試験は将来の標準治療となりうる治療であり、治療の立派な選択肢のひとつであるといえます。



◇ 病期(ステージ)別治療法

  乳がんの標準治療は病期(ステージ)によって異なります。
  また同じ病期でもがんの広がりや性質によって治療法が違う場合がありますから、担当医に十分な説明を受けてください。


◇ 0期

  乳房切除術、または乳房部分切除術と放射線照射を行います。
  術後に温存乳房、あるいは反対側の乳房での再発を予防するためにホルモン療法を行うこともあります。



◇ I期〜IIIa期

  手術が可能な乳がんです。しこりの大きさによって術式(部分切除術、または両胸筋温存乳房切除術)が選択されます。
  手術の後、手術で切除した標本を顕微鏡で検索します(病理組織学的検査)。
  病理組織学的検査によって、がんの大きさ、わきの下のリンパ節転移の数、組織学的異型度(細胞分裂の数やがん細胞の
  形態によって決められる悪性度の指標。「組織学的グレード」とも呼ばれます)
  ホルモン受容体の有無などを調べ再発の危険性を評価します。

  そして再発の危険性が高いと判断された場合、その再発の危険性の大きさ、年齢や月経の状況、ホルモン受容体の有無に
  応じて、術後に再発を予防する目的の薬物療法(術後薬物療法)を行います。

  またがんの広がりや選択した術式に応じて術後に放射線療法が勧められる場合もあります(術後放射線療法)。
   IIIa期の場合、またはII期でもしこりが大きい場合には先に抗がん剤治療を行い、手術をその後に行うことがあります。
  これを「術前化学療法」といいます。
  術前化学療法には、乳房のしこりの縮み方によって抗がん剤の治療効果がわかる、またうまく小さくなれば乳房の形を残す
  手術(乳房温存手術)が行える可能性が出てくる、という利点があります。
  手術と抗がん剤治療のどちらを先に行っても、その順番は再発のしやすさに影響を与えないということがわかっています。



◇ IIIb、IIIc期

  原則として手術ができない乳がんです。
  薬物療法、放射線療法を行ってしこりが小さくなり、手術が可能になれば手術を行う場合もありますが、
  この病期における手術の意義はまだはっきりしていません。

  薬物療法を行う前に乳房のしこりに対してがん組織の性格を調べるための「生検」(しこりの一部分、またはしこり全体を
  採取し、病理組織学的検査を行うこと)を行います。
  病理組織学的検査の結果に基づいて使用する薬を選択することもあります。



◇ IV期

  乳房のしこりか転移病巣の生検を行います。
  この病期は全身にがんが広がっている状態なので、手術によって乳房をとることには意味がありません。

  再発した乳がんと同様に、病理組織学的検査に基づいて薬の治療すなわち全身治療を行い、がんの進行を抑え、
  がんによる症状を抑えます。
  骨転移や脳転移などによる部分的な症状を和らげるため、放射線照射や手術が行われることがあります。



◇ 再発乳がん

  乳がんの手術をした場所やその近くだけに再発した場合(局所再発)には、その部分だけを手術で切除したり、
  放射線治療を行ったりすることもあります。

  遠隔転移が認められた場合には、がんは全身に広がっているので、原則として全身治療すなわち薬物療法を行い、
  全身に散らばったがんがふえるのを抑える必要があります。

  薬の治療は、がんの広がりや乳がんの性質に応じて選択されます。
  がんが遠隔転移をきたしている場合には病気を完全に治すことは困難です。
  がんの進行を抑えることと、転移によって出る痛みなどの症状を和らげ、なるべく日常生活を支障なく送ることが
  できるようにすることが治療の目的となります。

  治療にあたっては治療効果と副作用のバランス、そして何よりも患者さん自身の価値観が重要です。
  日ごろから担当医とよくコミュニケーションをとり信頼関係を築くことが非常に大切です。
   症状をとるためには、全身的な薬物療法の他に病状に応じて局所療法も行います。
  痛みや骨折、神経圧迫の危険のある骨転移部位に放射線治療を行ったり、がん性胸水、腹水により呼吸困難や腹部の張り
  が強いときには、針を刺して水を抜いたりします。
  骨転移により神経が圧迫されたり、骨折した場合には整形外科的手術が行われることもあります。
  また、脳に転移した場合には放射線療法や手術が行われることもあります。



      上記の内容は「独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター」様より抜粋したものです。




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